駈込み訴え/太宰治

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やがてあの人は宮に集る大群の民を前にして、これまで述べた言葉のうちで一ばんひどい、無礼傲慢ごうまんの暴言を、滅茶苦茶に、わめき散らしてしまったのです。左様、たしかに、やけくそです。私はその姿を薄汚くさえ思いました。殺されたがって、うずうずしていやがる。「禍害わざわいなるかな、偽善なる学者、パリサイ人よ、汝らは酒杯さかずきと皿との外を潔くす、然れども内は貪慾どんよくと放縦とにて満つるなり。禍害なるかな、偽善なる学者、パリサイ人よ、汝らは白く塗りたる墓に似たり、外は美しく見ゆれども、内は死人の骨とさまざまのけがれとに満つ。かくのごとく汝らも外は正しく見ゆれども、内は偽善と不法とにて満つるなり。蛇よ、まむしすえよ、なんじらいかで、ゲヘナの刑罰を避け得んや。ああエルサレムエルサレム、予言者たちを殺し、つかわされたる人々を石にて撃つ者よ、牝鶏めんどりのそのひなを翼の下に集むるごとく、我なんじの子らを集めんとしこと幾度ぞや、れど、汝らは好まざりき」

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